最後に自分のために何かを選んだのは、いつだったでしょうか。そう聞かれて、すぐに思い出せない方は少なくないと思います。
介護をしていると、買い物かごの中身も一日の予定も、気づけば相手のものばかりになります。自分の分は「まあいいか」で後回しになり、それが何か月も続いていきます。
けれど自分を後回しにし続けた人から、先に疲れていきます。介護を続けているご家族を見ていて、はっきりと感じることです。
- 自分の買い物だけ後回し
- 好きだったことから遠ざかる日々
- 休むことへの後ろめたさ
- 何をしたいか分からない状態

息抜きなんて、そんな時間はとても取れません。

まとまった時間でなくて大丈夫ですよ。
この記事では、5分あればできる息抜きと、そのなかでも特におすすめしたい「自分のために何か一つ選ぶ」という方法を紹介します。趣味を再開しましょう、という話ではありません。
介護者が息抜きできない理由

休んだほうがいいと分かっていても、実際には休めない。その理由は気持ちの問題だけではありません。
介護という生活そのものに、休みにくい構造があります。理由が分かると、自分を責めなくて済みます。まずはそこから見ていきましょう。
時間が細切れになる生活
介護中の時間は、まとまった形では手に入りません。
呼ばれれば中断し、様子を見に行き、また戻る。その繰り返しのなかでは、たとえ空き時間の合計が2時間あっても、連続した2時間にはならないのです。
だからまとまった時間を前提にした息抜きは、そもそも成立しません。時間が取れないのではなく、時間の形が違うのだと考えてみてください。
自分を後回しにする習慣
介護が始まると、判断の基準が自然と相手中心になります。
食事の好み、部屋の温度、外出の予定。すべてを相手に合わせているうちに、自分が何をしたいのかを考える回路そのものが働かなくなっていきます。
これは優しさの表れですが、長く続けば感覚が鈍ります。自分の希望を思い出すことにも、練習が必要になります。
楽しむことへの後ろめたさ
そしてもう一つが、楽しむことへの後ろめたさです。
相手がつらい思いをしているのに、自分だけ息をついてはいけない。そう感じてしまう方は本当に多くいます。
けれど、介護する人が笑顔でいることは、される人にとっても支えになります。我慢の量と介護の質は、比例しません。
趣味が続かないのは当然

息抜きに趣味をすすめられて、うまくいかなかった経験はありませんか。
続かなかったのは、あなたの意志が弱いからではありません。介護中の生活と、趣味という活動の相性が悪いだけです。理由を3つに分けて説明します。
まとまった時間が要る趣味
多くの趣味は、ある程度の時間を前提にしています。
映画は2時間、手芸は準備から片づけまで含めれば1時間近く。始めたのに最後までたどりつけないと、達成感どころか中途半端な感覚だけが残ります。
時間が読めない生活のなかでは、終わりが決まっているものほど負担になります。
中断される前提の日常
介護中は、いつ呼ばれるか分かりません。
集中しかけたところで中断される。それが繰り返されると、そのうち始めること自体を避けるようになります。楽しむつもりが、気を張る時間に変わってしまうのです。
- 途中でやめても構わないもの
- 片づけに時間がかからないもの
- 続きから再開できるもの
選ぶなら、この3つを満たすものが向いています。
この3つを満たす手仕事は、こちらの記事で紹介しています。

準備と片づけの負担
見落とされがちなのが、準備と片づけの手間です。
道具を出して、終わったらしまう。この前後の作業が面倒だと感じた時点で、その趣味は続きません。すでに家事で手一杯なら、なおさらです。
つまり何も準備せずに始められて、片づけの要らないものが、いまの生活には合っています。
5分でできる息抜きの形

ここからは、実際に5分あればできることを紹介します。
どれも準備が要らず、途中でやめても支障がありません。すべてやる必要はなく、ひとつ試すだけで十分です。
温かい飲み物を淹れる時間
いちばん手軽なのが、自分のために一杯淹れることです。
ついでに淹れるのではなく、自分の分として選んで淹れる。この違いが大切です。好きな茶葉やインスタントのスープでも構いません。
温かいものを飲むと、呼吸が自然と深くなります。たった5分でも、体はきちんと緩みます。
好きな香りを取り入れる
香りは、短時間で気分を切り替えやすいものです。
ハンドクリームやリップ、入浴剤など、日常的に使うものを好きな香りに変えるだけで、使うたびに小さな休憩が生まれます。
介護の場面ではにおいに気を使うことが多いぶん、自分の好きな香りに触れる時間は貴重です。
外の空気を吸いに出る
玄関の外に出て、深呼吸をする。それだけでも効果があります。
同じ空間に長時間いると、気持ちの逃げ場がなくなります。数十秒でも景色が変わると、頭が切り替わります。
窓を開けるだけでも構いません。大切なのは、意識的に自分の時間だと区切ることです。
自分のために何か一つ選ぶ
そしてもうひとつ、おすすめしたいのが「選ぶ」ことです。
何を買うかを考えている時間は、自分の好みと向き合う時間でもあります。介護のなかで薄れていく感覚を取り戻す方法として、これが意外なほど効きます。
次の章で、もう少し詳しく説明します。
自分のために選ぶという息抜き

自分のために何か一つ選ぶ。これは息抜きとして、かなり優秀な方法です。
数分でできて、途中でやめられて、片づけも要りません。介護中の生活に必要な条件を、すべて満たしています。
買うことより選ぶことに意味
大切なのは、買うことそのものではありません。
どれがいいか迷い、比べ、自分の好みを確かめる。その過程に価値があります。結局買わなかったとしても、その時間は自分のために使われています。
介護をしていると、選ぶ機会そのものが減ります。自分の好みを思い出す練習として、これ以上のものはありません。
家を出ずにできる気分転換
外出できないことが、介護者の息抜きを難しくしています。
その点、通販は家にいながら完結します。相手が眠っている数分、待ち時間の合間。細切れの時間にそのまま収まります。
店舗まで行く準備も、留守にする心配も要りません。外出できない人ほど、この方法は向いています。
少額でも変わる気持ち
高価なものを買う必要はまったくありません。
好きな色のタオル一枚、少しいいお菓子、前から気になっていた本。数百円のものでも、自分のために選んだという事実は変わりません。
金額より自分のためという名目が立つことのほうが大切です。
届く日を待つという楽しみ
通販には、もうひとつ良いところがあります。
注文してから届くまでの数日、待つ時間が生まれます。単調になりがちな毎日に、小さな予定ができることの意味は小さくありません。
届いたときのささやかな嬉しさも含めて、ひとつの買い物が何日か分の気晴らしになります。
後ろめたさとの向き合い方

ここまで読んで、それでも気が引けるという方もいると思います。
その気持ちは、真剣に向き合ってきた証拠でもあります。ただ、後ろめたさを抱えたままでも、休むことはできます。消してから休む必要はありません。
自分を大切にすることの意味
介護でいちばん避けたいのは、支える側が倒れることです。
介護する人が体調を崩せば、介護を受けている方の生活も同時に止まります。自分を大切にすることは、相手の生活を守ることでもあります。
介護は長期戦という前提
介護がいつまで続くかは、誰にも分かりません。
全力で走り続けられる期間には限りがあります。息を抜きながら続けるほうが、結果として長く支えられます。
家事の負担そのものを減らす方法は、こちらの記事にまとめました。

頼る練習にもなるという視点
自分のために何かをすることは、人に頼る練習にもつながります。
いま少しの時間を自分に使えない人は、いざというときに助けを求めることも難しくなりがちです。小さな息抜きは、その入り口になります。
ご自身の聞こえが気になっている方や、家族との会話がすれ違うと感じている方は、こちらの記事も参考にしてください。

介護の息抜きのよくある質問

最後に、息抜きについてよく聞かれることをまとめました。
答えに正解はありません。いまの自分に合いそうなものを選んでください。
5分も取れないとき
その場合は、いま行っている動作のなかに小さな楽しみを混ぜてみてください。
洗い物のときに好きな音楽をかける、といった形でも構いません。時間を新しく作らなくても、質は変えられます。
後ろめたさが消えないとき
無理に消そうとしなくて大丈夫です。
後ろめたさを感じながらでも、休むことはできます。感情と行動は切り離して構いません。
何を選べばいいか分からないとき
好みが分からなくなっているのは、よくあることです。
まずは消耗品から選んでみてください。タオルや石けんなど、必ず使うものなら失敗もありません。
お金をかけたくないとき
見るだけでも息抜きになります。
買わずに眺めて、気に入ったものを覚えておく。それだけでも、自分の好みと向き合う時間になります。
家族に理解されないとき
説明して分かってもらえないときは、無理に説得しなくて構いません。
休む理由を誰かに認めてもらう必要はありません。あなたが続けるために必要だと判断すれば、それで十分です。
介護の息抜きのまとめ

介護中の息抜きは、まとまった時間を確保することではありません。細切れの数分を、自分のために使うと決めることです。
- 趣味が続かないのは相性の問題
- 5分あればできることを選ぶ
- 自分のために選ぶ時間そのものに価値
- 通販なら家を出ずに完結
- 後ろめたさは抱えたままでいい
今日のうちに、ひとつだけ自分のために選んでみてください。その数分が、明日の自分を少し楽にします。
すぐ横になれる場所をつくる方法は、こちらの記事でも紹介しています。

一日の終わりに、夜のほっと一息をつくための工夫は、こちらの記事でまとめています。

介護を続けているあなたが、自分をいたわる時間を持てますように。
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