介護の合間に、ふとスマートフォンを開く。気づけば、ほかの人の楽しそうな毎日を眺めていた。そんなことはありませんか。
少し前に、ポッドキャスト「聞く健康習慣 Hana博士の体調最高ラジオ」で、「ハイフロー活動」という言葉を知りました。時間を忘れて夢中になれる活動のことです。私が思い浮かべたのは、かぎ編みでした。誰かに会う前にコースターを編んで渡す。そんなふうに、思いついたときに細々と続けています。
それからは手を動かす時間を意識するようになり、SNSをダラダラ見る時間が減りました。編み終えたときの「できた」という満足感や、ささやかな幸福感は、眺めて終わる時間にはなかったものです。
- 休憩のつもりが、SNSを眺めて終わってしまう
- ほかの人の毎日と比べて、気持ちが沈む
- 自分の時間があっても、何をすればいいか分からない
- 趣味を始めたいけれど、続く気がしない

ちょっと休もうと思っても、結局スマホを見て終わっちゃうんですよね。

分かります。私もつい見てしまって、ちょっと疲れたりします。手を動かすことを少しだけ取り入れると、同じ休憩でも過ごし方が変わりますよ。
この記事では、編み物・塗り絵・料理など、介護の合間に取り入れやすい手仕事を紹介します。どれか一つ、自分に合いそうなものが見つかればうれしいです。
SNSを眺めて疲れてしまう時間

スマートフォンは、少しの空き時間にすぐ開けて便利です。
ただ、休むつもりで開いたのに、かえって疲れてしまうこともあります。まずは、その時間をふり返ってみましょう。
介護の合間につい開くスマートフォン
介護をしていると、自分の時間は細切れになりがちです。
まとまった時間がないので、すぐに開けてすぐに閉じられるスマートフォンに手が伸びます。それ自体は、悪いことではありません。
周りのキラキラと比べてしまう
SNSには、旅行や外食、きれいに片づいた部屋など、楽しそうな場面が並びます。
介護で出かけられない毎日と、つい比べてしまう。そして「自分だけが取り残されている」ような気持ちになる。そう感じるのは、あなただけではないと思います。
眺めたあとに残る疲れ
流れてくる情報を次々に眺めていると、時間はあっという間に過ぎます。
それなのに、閉じたあとには休めた感じがあまり残らない。夜に眺めて、眠る時間が遅くなってしまうこともあります。夜の過ごし方は、こちらの記事でもまとめています。

夢中になれるハイフロー活動

同じ休憩の時間でも、過ごし方によって、気持ちの残り方は変わります。
ポッドキャストで知った「ハイフロー活動」は、時間を忘れて夢中になれる活動のことでした。心理学の「フロー」という考え方がもとになっています。
時間を忘れる「フロー」という状態
「フロー」は、心理学者のチクセントミハイが名づけた考え方です。
何かの活動に吸い込まれるように没頭している心の状態のことをいいます。スポーツや芸術だけでなく、ふだんの暮らしのなかの活動でも起こると考えられていて、幸福についての心理学の分野で研究が続けられているそうです。
出典:下條信輔「フロー体験と『前向き』」認知科学 32巻3号(2025年)/M.チクセントミハイ著・今村浩明訳『フロー体験 喜びの現象学』世界思想社
眺めるより手を動かす時間
SNSを眺めているとき、私たちは流れてくるものを受け取るだけになりがちです。
手仕事はその反対で、自分の手で少しずつ形にしていく時間です。目の前の一目、一色に集中しているうちに、ほかのことを考えずにすむ時間が生まれます。
同じSNSでも使い方で変わる
SNSをやめましょう、と言いたいわけではありません。
私がかぎ編みのブーケブランケットを知ったのも、インスタでした。比べるために眺めるのではなく、作りたいものを見つけるために使う。そう考えると、同じSNSでも付き合い方が変わってきます。
介護の合間に取り入れやすい手仕事

手仕事といっても、特別な才能はいりません。
ここでは、家で始めやすく、道具も少なくてすむものを4つ紹介します。合いそうなものがあれば、気軽に試してみてください。
編み物
毛糸と針があれば始められます。
一目ずつ編んでいく作業は、同じ動きのくり返しです。慣れてくると、手を動かしているうちに気持ちが落ち着いてくるのを感じる人もいます。コースターやアクリルたわしなど、小さなものならすぐに形になります。
塗り絵
下絵があるので、絵を描くのが苦手でも始めやすい手仕事です。
大人向けの塗り絵には、花や風景など細かい絵柄のものもあります。どの色を使うかを選ぶ楽しさもあります。色鉛筆があれば、テーブルの上ですぐに始められます。
料理
料理というと、毎日のごはん作りを思い浮かべるかもしれません。
ここでいうのは、自分が食べたいものを、ひと手間かけて作る時間です。好きなお菓子を焼く、ゆっくり煮込み料理を作るなど、作ること自体を楽しめるものを選んでみてください。
ナンプレなどのパズル
数字を埋めていくナンプレ(数独)は、紙とペンがあればできます。
一問ごとに区切りがあるので、短い時間でも一区切りつけやすいのがよいところです。ナンプレの本は、100円ショップのお店でも見かけます。
自分に合う手仕事の見つけ方

どの手仕事が合うかは、人によって違います。
介護の合間に続けるなら、楽しいかどうかに加えて、暮らしに無理なくなじむかも大切です。選ぶときのヒントをまとめました。
途中でやめても戻りやすいもの
介護をしていると、呼ばれて手を止めることがよくあります。
編み物や塗り絵は、途中で置いておいて、また続きから始められます。準備や片づけに時間がかからないものを選ぶと、細切れの時間でも続けやすくなります。
小さく始められるもの
最初から大きな作品を目指すと、途中で疲れてしまうことがあります。
一日で終わるくらいの小さなものから始めると、「できた」という気持ちを早く味わえます。それが、次も続けたいという気持ちにつながります。
100均でそろう道具から
毛糸やかぎ針、塗り絵、色鉛筆などは、100円ショップでもそろいます。
合うかどうか分からないうちは、身近で手に入る道具で試してみるのがおすすめです。ワッツのオンラインショップなら、毛糸やかぎ針、大人向けの塗り絵を家から注文できます。
100円ショップで介護に役立つグッズは、こちらの記事でも紹介しています。

ベッドサイドで見た手仕事

看護師として働いてきたなかで、手仕事のある場面に出会ったことがあります。
そこには、言葉にしなくても伝わるものがあったように思います。
家族が編んだ靴下や帽子
ベッドサイドで、編み物をしているご家族がいました。
出来上がった靴下や帽子を見ると、ご家族の愛情を感じました。そばで過ごす時間に、手を動かしながら本人を思う。そんな時間だったのかもしれません。
病室で見かけたブーケブランケット
当時、かぎ編みのブーケブランケットがインスタで話題になっていました。
それを病室でも見かけて、思わずときめいたのを覚えています。
私の場合はかぎ編みだった
私の場合、いちばん合っていたのはかぎ編みでした。
きっかけは、病室でも見かけた、あのブーケブランケットです。ただ、ブランケットは初心者には難しそうに感じました。そこで、小さなものから、YouTubeの動画を見ながら作り始めました。
選んだのは、ブーケの形になるコースターです。飾りにもなるし、コースターとしても使える。それに、目標にしていたブランケットにも近い。そう思って決めました。

始めたばかりのころは、なかなか思うように進みませんでした。鎖編み、細編み、長編みという基礎の基礎を、動画で何度もくり返し見て覚えました。最初に円を編めたときは、とてもうれしかったのを覚えています。
毛糸玉から糸端を取り出すのに、今でも一苦労することがあります。上手になったから続いている、というわけではありません。
今も、思いついたときに小さなものを編むくらいの細々としたペースです。それでも、やめずに続いています。

形に残るものの温かさ
手仕事のよさは、時間が形になって残ることです。
誰かのために作るのもいいですし、自分のために作るのも、もちろんすてきです。できたものを見るたびに、夢中になっていた時間を思い出せます。
夢中になれる手仕事のよくある質問

手仕事を始めるときに、気になりそうなことをまとめました。
不器用でもできるのか
大丈夫です。私もかぎ編みを始めたころは、なかなか思うように進みませんでした。上手に作ることが目的ではありません。夢中になれる時間を持つことが目的なので、出来ばえは気にしなくていいのです。塗り絵やナンプレのように、下絵や問題があるものから始めるのもおすすめです。
まとまった時間がとれないとき
5分でも10分でもかまいません。途中でやめても続きから始められるものを選べば、細切れの時間でも楽しめます。短い時間でできる息抜きは、こちらの記事でもまとめています。

目や肩が疲れるとき
夢中になると、同じ姿勢が続きがちです。ときどき手を止めて、目を休めたり肩を回したりしましょう。痛みやしびれが続くときは、無理をせず医療機関に相談してください。
ついSNSを見てしまうとき
見てしまう自分を責めなくて大丈夫です。手仕事の道具を目につくところに置いておくと、スマートフォンの代わりに手に取りやすくなります。SNSは、作りたいものを探すときに使ってみてください。
料理が負担に感じるとき
毎日のごはん作りで疲れているなら、料理を選ばなくてかまいません。楽しいと思えるものを選ぶことがいちばん大切です。
夢中になれる手仕事のまとめ

介護の合間の休憩は、短くても大切な時間です。
- SNSを眺めて比べると、かえって疲れることがある
- 時間を忘れて没頭する状態を「フロー」という
- 編み物・塗り絵・料理・パズルは家で始めやすい
- 途中でやめても戻れる、小さなものから始める
- 道具は100円ショップでもそろう
- 上手に作ることより、夢中になれる時間を大切に
少しだけ介護を忘れて、手を動かす時間。それは、自分を大切にする時間でもあります。あなたに合う手仕事が見つかりますように。
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