「訪問看護を入れてみませんか」「ヘルパーさんを頼んでみませんか」。そうすすめられても、すぐには気が進まないことがあります。
家の中を見られたくない。気を使って、かえって疲れそう。まだ自分たちでできる。そう思うのは、とても自然なことです。この記事では、ためらう気持ちを無理に変えようとはしません。そのうえで、知っておいてほしいことをまとめました。
- 家に他人を入れたくない
- 気を使って疲れそう
- まだ自分たちでできる
- 本人が嫌がるので進められない

すすめられたのは分かるんですけど、家に来てもらうのはちょっと…。

そうおっしゃる方は少なくありません。どんなことが気がかりか、聞かせてもらえますか。すすめた人に理由をたずねてみるのもいいですよ。
この記事では、ためらう理由を整理したうえで、提案される理由、初めましての不安をやわらげる方法、契約のときに聞いておきたいことをまとめました。
家に人を入れたくないのは自然なこと

介護サービスをためらう気持ちには、いくつもの理由があります。
どれも、わがままでも、心が狭いわけでもありません。まずは、自分の気持ちがどこから来ているのかを整理してみましょう。
家の中を見られたくない気持ち
家は、いちばん私的な場所です。
散らかっているところや、暮らしぶりを見られたくないと感じるのは自然なことです。とくに、介護で手が回らなくなっている時期ほど、人を入れることに抵抗が出てきます。
気を使って疲れそうという不安
人が来るとなると、お茶を出したほうがいいのか、何か話さなければいけないのかと考えてしまいます。
休む時間がほしいのに、かえって気疲れが増えるのではと心配になる方も多いです。
まだ自分たちでできるという思い
今はまだ自分たちで回せている。人の手を借りるほどではない。
そう感じるのは、これまで一生懸命やってきた証でもあります。ただ、介護は長く続くこともあります。今できているかどうかだけでなく、この先も続けられるかという視点も、どこかに置いておけるといいと思います。
費用がどれくらいかかるか分からない不安
いくらかかるのか分からないままでは、頼むと決められないものです。
介護保険のサービスは、所得などに応じて1割から3割の自己負担で利用できます。ただ、使う回数やサービスの種類で金額は変わるので、実際の負担が見えにくいのが正直なところです。
費用が心配でためらう方は、思いのほか多いです。
入院中であれば、医療ソーシャルワーカーが、退院後にかかる費用の見通しを試算してくれることがあります。在宅で過ごしている場合は、ケアマネジャーに相談してください。
「いくらまでなら続けられるか」を伝えてもらえると、その範囲でどう組み立てるかを一緒に考えられます。
本人が嫌がるときの家族の戸惑い
家族は頼みたいのに、本人が嫌がる。この場合も多いです。
本人にとっては、人の世話になることを認めるような気持ちになることもあります。無理に説得しようとすると、かえってかたくなになることもあります。
それでも提案されるのには理由がある

ケアマネジャーや医師、看護師がサービスをすすめるのは、決まりだからではありません。
提案する側には、それぞれ理由があります。断るかどうかを決める前に、その理由を聞いてみてください。
提案する側が見ている先
医療者や介護職は、今の状態だけでなく、少し先の変化も考えています。
医療者や介護職が「そろそろ使ってみませんか」と声をかけるのには、必ず理由があります。体の状態の変化や、介護している家族の負担、これから起こりそうなことを見て、今のうちに整えておいたほうがいいと判断しているからです。
その提案に納得できなければ、「どうしてそう思うのですか」と聞いてみてください。何を心配しているのかが分かると、受け止め方も変わってくると思います。
訪問看護がどんな役割を持っているかは、こちらの記事でまとめています。

早めに始めると選べることが増える
必要に迫られてから探すと、選ぶ余裕がなくなります。
希望する曜日や時間に空きがないこともありますし、本人と支援する人が顔なじみになるには時間がかかります。早めに始めておくと、体調が変わったときにも慌てずにすみます。
介護する人を守るという理由
提案は、本人のためだけではありません。
介護している家族が倒れてしまうと、家での暮らしは続けられなくなります。介護する人の生活を守ることも、サービスの大切な役割です。介護する人の休息については、こちらの記事でまとめています。

初めましての不安をやわらげる方法

知らない人が家に来ることへの不安は、誰にでもあります。
少しでも知っている人が来る状態に近づけると、気持ちはずいぶん楽になります。ここでは、そのための方法を紹介します。
退院前の顔合わせができるとき
入院中であれば、退院の前に、病院のスタッフ・本人・家族・訪問するスタッフが集まって話し合えることがあります。
退院前に顔を合わせておけると、初日が「初めまして」ではなくなります。不安があるなら、顔合わせをしたいと伝えてみて大丈夫です。
入院中に相談するときは、まず病棟の看護師が窓口になることが多いです。そこから、退院支援を専門にしている看護師やケアマネジャーへつないでいきます。誰に言えばいいか分からないときは、ふだん関わっている看護師に声をかけてみてください。
顔合わせができない場合もある
ただし、すべての人に顔合わせができるわけではありません。
退院までの日数や、体調、事業所の都合によっては、初日が初めましてになることもあります。そのときは、次に紹介する「契約のときの質問」で不安を減らしていきましょう。
事前に聞けることと見学
どんな事業所が来るのかを、前もって知ることもできます。
病院から事業所を紹介する場合は、家の住所から訪問できる範囲にある事業所を調べ、「こういう状態の方だけれど対応してもらえるか」と問い合わせて、引き受けてもらえたところにお願いしています。
やみくもに決めているわけではないので、その点は安心してもらっていいと思います。
もちろん、自分で調べたいという方は、事業所のホームページなどで情報を集めて、「ここがいい」「こういうところがいい」と考えを伝えてもらって大丈夫です。
契約のときに聞いておきたいこと

不安の多くは、分からないことから来ています。
契約のときは、疑問をそのままにせず、遠慮なく質問してください。聞かれて困る事業所はありません。次のようなことを確認しておくと安心です。
- 来るのは決まった人か、何人くらいで来るのか
- 訪問の曜日や時間帯、1回にどれくらいいるのか
- 急に具合が悪くなったときの連絡先と、夜間や休日の対応
- 費用の目安と、キャンセルするときの決まり
- 合わないと感じたときに、担当や事業所を変えられるか
誰がどのくらい来るのか
毎回同じ人が来るのか、何人かで交代するのかは、事業所によって違います。
「できるだけ同じ人に来てほしい」という希望は伝えて構いませんが、人員の都合で、そのとおりにならないことも多いのが実際のところです。曜日や時間帯によって担当が決まることもあります。
担当が交代する場合でも、本人の状態や気をつけることは事業所の中で共有されます。どのように引き継がれるのかを聞いておくと安心です。
急なときの連絡と対応
夜間や休日に具合が悪くなったとき、どこへ連絡すればいいのかを確認しておきましょう。
訪問看護では、時間外の相談や訪問に対応しているところもありますが、申し込みが必要だったり、体制が事業所によって違ったりします。急なときの連絡の流れは、こちらの記事でまとめています。

費用とキャンセルの決まり
介護保険のサービスは、所得などに応じて1割から3割の自己負担で利用できます。
実際にいくらかかるのかは、使うサービスと回数で変わります。キャンセルしたときに料金がかかるかどうかも、決まりを聞いておくと安心です。
合わないと感じたときの相談
相性が合わないと感じたときに、どこへ相談すればいいのかも確認しておきましょう。
埼玉県のページでは、契約のときに確認しておくこととして、次のように案内されています。
※契約するときには、サービス提供事業者のトラブル相談窓口を確認しておきましょう。
事業所には、利用者からの相談や苦情を受ける窓口や担当者がいます。担当のケアマネジャーに相談することもできます。
今は必要ないと思ったときは

すすめられても、今は必要ないと思うなら断って大丈夫です。
ただ、困ったときにつないでもらえる場所があることだけは、頭の片隅に置いておいてほしいと思います。
今は必要ないと伝えていい
介護サービスは、使わなければいけないものではありません。
「今は大丈夫です」と言っていいですし、断ったからといって、見放されることはありません。必要になったときに、また相談すれば大丈夫です。
外来の通院は続けてください
サービスを断る場合でも、外来の通院は必ず続けてください。
体の状態を診てもらう機会がなくなると、変化に気づくきっかけも減ってしまいます。通院のときに「家で看るのがしんどくなってきた」と話すこともできます。その一言から、必要な支援につながることもあります。
困ったときにつないでもらえる場所
いざというときの相談先を、いくつか知っておくと心強いです。
- 介護保険を使っている場合:担当のケアマネジャー
- まだ使っていない場合:地域包括支援センター
- 入院中:病院の相談員や、ふだん関わっている看護師
- 制度のことや事業所への不満:市区町村の窓口
地域包括支援センターは、保健・医療・介護・福祉のさまざまな面から相談にのってくれる地域の窓口です。介護サービスについての相談や困りごとは、市区町村の窓口や地域包括支援センターでも受け付けています。
出典:奈良市「地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)」/静岡市「介護保険サービスに関する相談・苦情」
家での暮らしを支えるメンバーについては、こちらの記事でまとめています。

気持ちが変わったときに再開できる
一度断っても、あとから頼むことはできます。
入院や転倒、家族の体調の変化など、状況が変われば必要なものも変わります。そのときに「前に断ったから」と遠慮する必要はありません。
訪問サービスをためらうときのよくある質問

最後に、ためらっているときによくある疑問をまとめました。
対応は事業所や地域によって違うことがあります。気になることは、ケアマネジャーや事業所に直接聞いてみてください。
本人がどうしても嫌がるとき
無理に説得しようとせず、まずはケアマネジャーに相談してみてください。
本人が何を嫌がっているのか(人が来ること、費用、知らない人に体を触られること)によって、できる工夫が変わります。回数や時間を少なくして始められないか、相談することもできます。
家の中を片づけてから頼むべきか
そのままで大丈夫です。
支援する人は、暮らしのしづらさを見るためにも家の様子を見ています。片づけられないほど余裕がないことも、大事な情報です。
担当の人を変えてもらえるのか
相談できます。
事業所には相談や苦情を受ける窓口があり、担当のケアマネジャーに相談することもできます。言いにくいときは、ケアマネジャーを通して伝えてもらうこともできます。
一度断ると次は頼みにくいのか
そんなことはありません。
気持ちや状況が変わるのは当たり前のことです。何度でも相談して大丈夫です。
お試しで使えるのか
見学や体験ができるかどうかは、サービスの種類と事業所によって違います。
デイサービスなどでは見学や体験ができることがあります。訪問のサービスは契約をしてから始まることが多いので、まずは回数を少なくして始められないか相談してみてください。
費用が心配なとき
費用の心配も、遠慮せず相談してください。
介護保険のサービスは1割から3割の自己負担で利用できます。負担が重いときに使える制度もあるので、ケアマネジャーや市区町村の窓口に相談してみましょう。
ためらう気持ちとのつきあい方のまとめ

家に人を入れたくない気持ちは、無理に変えなくて大丈夫です。
- ためらうのは自然なこと
- 提案する側には理由がある
- 不安なら退院前の顔合わせを希望していい
- 契約のときに疑問は遠慮なく質問する
- 断ってもいい。見放されることはない
- 困ったときにつないでもらえる場所がある
必要になったときに、相談できる場所を知っている。それだけで、家での暮らしはずいぶん心強くなります。
訪問看護を使い始めたあとの、看護師とのつきあい方は、こちらの記事でまとめています。

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