できることなら、住み慣れた家で過ごさせてあげたい。でも、このまま家で看続けられるのか自信がない。
介護をしていると、そんなふうに気持ちが揺れることがあります。けれど、家で過ごすことにも、病院や施設に頼ることにも、それぞれの意味があります。
- 家で看てあげたいけれど、続けられるか不安
- 施設に頼るのは、見放すようで申し訳ない
- 急に具合が悪くなったらと思うと怖い
- 本人は家族に遠慮しているように見える

家で看てあげたい気持ちはあるのに、もう限界かもしれないと思うこともあって。

揺れるのは、それだけ大切に思っているからですよね。どちらを選んでも、大丈夫ですよ。
この記事では、家で過ごすことの意味と、ためらう理由、病院や施設に頼る選択、そして家で過ごすために使える支えをまとめました。
家で過ごすことの意味

家は、その人が長く暮らしてきた場所です。
厚生労働省の調査では、治る見込みのない病気になったと仮定して、どこで医療や介護を受けたいかを尋ねています。自宅を選んだ人の理由は、次のとおりでした。
自宅で医療・ケアを受けることを選択した理由について、「住み慣れた場所にいたいから」、「自分らしく好きなように過ごしたいから」、「家族等との時間を多くしたいから」との回答が多かった。
病人ではなく一人の人としていられる
病院や施設では、どうしても治療やケアを受ける立場として過ごす時間が長くなります。
家では、父であり、母であり、夫や妻であり、病気になる前と同じ、一人の人としてそこにいられます。いつもの椅子、いつもの景色、いつもの家族の声。その当たり前が、本人を支えてくれることがあります。
遠慮しなくていい時間
病院や施設には、多くの人が一緒に過ごすための決まりがあります。
家なら、面会時間を気にせず家族がそばにいられますし、電話も好きなときにかけられます。まわりに気をつかわず、遠慮しないで過ごせることは、家ならではの大きな意味です。
大きなことでなくても叶えられることがある
家で過ごす意味は、特別な出来事だけではありません。
好きなテレビを見る、家族と同じ食卓を囲む、庭や窓の外を眺める。小さな「いつもどおり」が、たくさん叶えられるのが家です。
家で過ごすことをためらう理由

家で過ごしたい気持ちがあっても、ためらう理由があるのは自然なことです。
どんな理由でためらいやすいのかを知っておくと、本人と家族それぞれの気持ちを整理しやすくなります。
家族に迷惑をかけたくない
同じ調査で、病院や介護施設を選んだ人に、自宅を選ばなかった理由を尋ねています。
自宅以外で医療・ケアを受けることを選択した理由について、「介護してくれる家族等に負担がかかるから」との回答が最も多かった。
本人が「家族に迷惑をかけたくない」と、家で過ごしたい気持ちを口にしないこともあります。本人の思いの聞き方は、こちらの記事の人生会議の章でまとめています。

急に具合が悪くなったときへの不安
同じ質問の選択肢には、「症状が急に悪くなったときの対応に自分も家族等も不安だから」という理由もあります。
夜中に苦しそうにしていたら、どうすればいいのか。この不安は、家で過ごすことを考えるときに、とても大きなものです。この不安をやわらげる支えについては、この記事の後半でまとめています。
介護する人の体力や仕事との両立
介護する人にも、自分の体調や仕事、家庭があります。
気持ちだけで続けようとすると、介護する人が先に倒れてしまうこともあります。介護する人の暮らしを守ることも、大切な判断材料です。
病院や施設に頼るのは悪いことではない

病院や施設に頼ることに、うしろめたさを感じる方は少なくありません。
けれど、頼ることは、決して見放すことではありません。本人と家族にとって、よりよい形を選ぶことです。
頼ることは、看ることをやめることではない
病院や施設に入っても、家族にしかできない関わりはたくさんあります。
毎日の介護をプロに任せることで、会いに行ったときに、ゆっくり話を聞いたり、手を握ったりする時間が生まれることもあります。介護する人から、家族に戻れる時間ともいえます。
家族だからできる関わりについては、こちらの記事でも書いています。

病院や施設でも叶えられること
病院や施設にいても、本人の「したいこと」を叶える方法がないわけではありません。そのひとつが、外出や外泊です。
私はホスピスで働いていたとき、入院中の方が外出や外泊で、大切な時間を過ごす場面に立ち会ってきました。
思い出の味を子どもに伝えたいと、ご自宅で料理をする様子を見守ったこと。お子さんの入学祝いに、写真スタジオへ記念写真を撮りに行ったこと。病状が厳しいなかでも、叶えられたことがありました。
ただ、外出や外泊がどこまで叶うかは、病院や施設の方針や体制、そのときの病状によって大きく違います。スタッフは、命に関わるリスクと常に向き合いながら、叶えられるかどうかを慎重に考えています。
「必ずできるもの」ではなく、まずは「できるかどうか相談してみるもの」として、主治医や看護師に気持ちを伝えてみてください。
家と施設を組み合わせる
家か施設か、どちらか一つに決めなければいけないわけではありません。
たとえばショートステイは、短い期間だけ施設に泊まれるサービスです。
短期入所生活介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。
ふだんは家で過ごし、介護する人が休みたいときに施設を利用するという組み合わせ方もあります。使えるかどうかは、ケアマネジャーに相談してみてください。
家で過ごすために使える支え

家で過ごすことは、家族だけで抱えるものではありません。
医療や介護の専門職が家に来てくれるしくみがあります。支えを上手に使えば、家族だけで抱え込まずにすみます。
訪問診療と訪問看護
通院が難しくなったときは、医師や看護師に家へ来てもらう方法があります。
厚生労働省の資料では、医師が家に来る診療を、次のように分けて説明しています。
- 訪問診療:患者宅に計画的、定期的に訪問し、診療を行うもの
- 往診:患者の要請に応じ、都度、患者宅を訪問し、診療を行うもの
訪問看護は、看護師などが家に来て、体の状態を見たり、医療的なケアをしたりするサービスです。
訪問看護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の心身機能の維持回復などを目的として、看護師などが疾患のある利用者の自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を行います。
急に具合が悪くなったときの連絡の流れ
家で過ごすときに、いちばん不安なのが急な変化です。
訪問看護ステーションのなかには、訪問の時間以外にも電話で相談を受け、必要なときには訪問してくれるところがあります。
訪問看護をご利用いただいている方に、ご自宅の医療機器トラブルがあったり状態の判断がつかない場合などに、専用の携帯電話にお電話をいただき緊急時のアドバイスをしたり、必要な場合は訪問するなど24時間365日対応し、在宅での療養生活が送れるように支援しています。別途申込みが必要となります。
このように、夜間や休日の対応は、申し込みが必要だったり、ステーションによって体制が違ったりします。契約のときに確認しておきましょう。
- ① まず訪問看護ステーションに連絡する
- ② 様子を伝えて、訪問してもらうか、電話で相談する
- ③ 必要に応じて、病院へ連絡する
訪問看護に連絡すると、看護師が状態を判断して、次にどうするかを一緒に考えてくれます。家族だけで判断しなくていいことは、大きな安心につながります。
急なときに適切に判断するためには、ふだんの様子を知っていることがとても大切です。
いつもの顔色や呼吸、食事の量、話し方。ふだんの様子を訪問看護に見ておいてもらうことで、「いつもと違う」に気づきやすくなり、電話での相談でも判断がしやすくなります。
どんなときに誰へ連絡するか、命に関わるような急な変化のときにどうするかも、あらかじめ主治医や訪問看護と話し合っておくと安心です。
ケアマネジャーと介護サービス
介護保険のサービスを使うときは、ケアマネジャーが相談にのってくれます。
ホームヘルパーやデイサービス、福祉用具のレンタル、ショートステイなど、家の暮らしに合わせてサービスを組み合わせることができます。まだ相談先がない場合は、お住まいの地域の地域包括支援センターに問い合わせてみてください。
家での暮らしを支えるメンバー全体については、こちらの記事でまとめています。

介護する人が休むための選択肢
家で過ごす時間を長く続けるためには、介護する人が休むことも欠かせません。
ショートステイやデイサービスを使って、介護から離れる時間をつくることに、うしろめたさを感じなくて大丈夫です。短い時間でできる息抜きは、こちらの記事でまとめています。

家で過ごすか迷うときのよくある質問

最後に、家で過ごすか、病院や施設に頼るかを迷うときによくある疑問をまとめました。
正解は一つではありません。本人と家族にとって、そのときにいちばん良い形を選んでいきましょう。
一度家で看ると決めたら途中で変えられないか
途中で変えても大丈夫です。
病状や家族の状況は、時間とともに変わります。家で過ごしていても病院や施設に移ることを相談できますし、その反対もあります。迷ったときは、主治医やケアマネジャー、訪問看護師に相談してみてください。
施設に入ってもらうことに罪悪感があるとき
罪悪感を感じるのは、それだけ本人を大切に思っているからです。
施設を選ぶことは、本人が安心して過ごせる場所を選ぶことでもあります。会いに行って、顔を見て、話をする。それも立派な「看る」ことです。
本人の本当の希望を聞くには
本人が家族に遠慮して、本当の気持ちを話さないこともあります。
元気なうちから、少しずつ話しておくことが大切です。話の切り出し方や、人生会議については、こちらの記事でまとめています。

家で急に具合が悪くなったときはどうするか
訪問看護を利用している場合は、まず訪問看護ステーションに連絡しましょう。訪問してもらうか電話で相談し、必要に応じて病院へ連絡します。
夜間や休日の連絡先と、どんなときにどうするかは、前もって主治医や訪問看護と確認しておくと安心です。
家で過ごす意味と頼る選択のまとめ

家で過ごすことにも、病院や施設に頼ることにも、それぞれの意味があります。
- 家では、病人ではなく一人の人としていられる
- 家族に迷惑をかけたくないと、ためらう人は多い
- 頼ることは、看ることをやめることではない
- 外出や外泊は、まず病院や施設に相談してみる
- 訪問看護があれば、急なときもまず訪問看護に連絡
- 家と施設は組み合わせたり、途中で変えたりできる
大切なのは、場所よりも、本人がその人らしくいられることです。そして、介護する人が無理をしすぎないことです。
この先の道のりと、今からできる備えについては、こちらの記事でまとめています。

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